フィリピン、特にマニラやセブなどの大都市を歩いていると、ストリートチルドレンや物乞いの多さに誰しもが気づくでしょう。
特にストリートチルドレンを見かけることが多く、カルチャーショックを受ける方も珍しくありません。
ただフィリピンを国としてみるとGDPの実質成長率が、2016年第1四半期時点で前年同期比6.9%と他東南アジア諸国と比べても高い水準を保っています。
ここがフィリピンの問題なのですが、結局、国としての成長の恩恵が一部の富裕層にのみにしか還元されていないんですよね。
このことを知ることがフィリピンという国の現状を知ることにも繋がっていくと思います。
なので、今回は他の情報をまとめて、フィリピンの格差概要について記事にしてみたので、ぜひ参考にしてみてください。
フィリピン格差概要
PHILIPPINE STATISTICS AUTHORITY(PSA)が出した「Filipino Families in the Poorest Decile Earn Six Thousand Pesos Monthly, on Average in 2012 (Results from the 2012 Family Income and Expenditure Survey)」という記事がフィリピンの格差を俯瞰するうえで役に立ちます。
英語記事なので、こちらで要約すると、こんな感じになります。
・最富裕層世帯(上位10%)の年収は71万5000ペソ、最貧困層世帯(下位10%)は6万9000ペソと、10倍以上の開きがある。
・最富裕層世帯は1年間に21万3000ペソの貯金をしているが、最貧困層世帯は支出が収入を超えている。
・地域別では、マニラ首都圏在住世帯の収入が最も高く、37万9000ペソなのに対し、最も低いのはイスラム教徒ミンダナオ自治地域(ARMM)で、13万ペソと3倍に近い開きがある。
・ジニ計数は、フィリピン全体で0.4605、マニラ首都圏で0.4028(社会騒乱多発の警戒ラインは0.4)。
・エンゲル係数は全世帯平均で42.8%。下位30%の世帯では62.3%、上位70%は39.7%。
エンゲル係数がここまで高いのが驚きですよね。
日本の平均は24.3%(2014年時点)なので、フィリピン人の生活が日本人と比べて、いかに大変なのかがわかります。
だからこそ、フィリピンでは数十年前の日本のように大家族で暮らしている人達が多いのでしょうね。
マニラのスラム街について
上の参考URLをクリックしてもらって、データをみて頂くとわかるのですが、マニラ首都圏と比べて他地域の収入が低いこともわかります。
そのため、多くの人がマニラに職を求めてやってきて、そこでも職にあぶれてしまった人たちがスラム街に住むようになったのでしょう(1980年代に多くの人がマニラに職を求めて押し寄せてきました)。
マニラのトンド地区のスラム街に現地NGO団体の協力で訪れた際に、ガイドの方が「ここにはマニラ出身者の人間は少ない。」と言っていたことの意味が分かります。
ちなみに、僕がトンド地区のスラム街に行くために利用させて頂いたNGO団体はこちらになります。
全て英語での案内になるので、多少コミュニケーションが取れる方で、お時間に余裕がある方は訪れてみてもいいかもしれません。
1人950ペソの参加料があるのですが、この団体がだした利益はスラム地区に住む人たちの支援に使われているそうです。
ツアー内容や予約方法、待ち合わせ場所について質問がある場合は、僕もできる限りお手伝いしたいので、連絡ください。
フィリピンの貧困率の高さ
出典:Aspirations and Challenges for Economic and Social Development in the Philippines Toward 203
これを見るとフィリピンの貧困率がいかに高いかがわかります。
左のラインが貧困者の割合、真ん中が1日につき1.25ドル以下で過ごしている人の割合、右のラインがジニ計数を表しています。
ちなみに2015年度の時点の貧困率は、フィリピン全体で21.1%。マニラ首都圏は4.5%。最も貧困率が高い地域がイスラム教徒ミンダナオ自治地域(ARMM)で、53.4%となっています。
改善の兆候は見ることができますが、それでもまだまだ貧困層の割合が高いことが分かりますね。
経済成長が比較的うまくいっていると言われているフィリピンですが、ここまで貧困層が多いのはなぜでしょうか?
それはやはり格差にあるのだと思います。
お金持ちはよりお金持ちになり、貧乏はより貧乏になる格差スパイラル。
このことを端的に表しているのが次の記事になります。
富の偏在
INQUIRER.netからCielito F. Habitoが出した記事「Economic growth for all」によると、
また、2011年、フィリピンのGDPは170億ドル上昇した。つまり、フィリピンの富豪上位40名の資産上昇額単体で、国内全体の収入上昇額の76.5%を占めることになる(ちなみに日本は2.8%)。
とのことです。
つまり一般国民には経済成長の恩恵がほとんど還元されていないということになりますね。
ちなみにフィリピンは国民1人当たりの収入の伸び率が高くありません(人口爆発が続いているため安い人材が大量にいるので)。
それにも関わらず、その高くない伸び率の多くが、元からの富裕層に還元されるようになっています。
解決策はあるのか
これはなかなか難しい問題です。
知識不足な僕の見解ですと、格差を是正していくことは難しいと思います。
格差の原因の1つとして政府の腐敗が挙げられていますが、今更どうこうできるレベルを超えているように僕は感じています。
それでもやはり、政府や自治体の腐敗をなくしていくことで、少しでも格差をなくすような取り組みに資金が充てられるようになることを願ってやみません。
ただスラム街に住んでいる人達であったり、絶対的な貧困に苦しんでいる人達を救うことは政府の取り組み如何でできると思っています。
教育をどうにかして受けさせることであったりして、貧困から抜け出すためのプログラムを組んだりすることによって(難しいことはもちろんですが)。
ここはドゥテルテ新政権に期待したところでもありますね。
まとめ
フィリピンは、データや一目見ただけではわからないような問題が山積みになっている国です。
1年間現地に住んで、それなりに色々なことをやってきたつもりの僕自身もわからないことだらけです。
だけど、だからこそ、そういう国が現実にあるんだということを少しでも多くの人に知ってもらいたいなと感じています。
現地の現状を知ることで、そこに問題意識を持った人たちが寄付をしたり様々な形で支援をするかもしれません。
それにそういう暮らしをしている人達がいることを知ることは、自分の考え方の幅を広げるために役に立つかもしれません。
それが仕事であったり、学業なんかに活かすことができるかもしれませんしね。
とにかく、僕はどんな形であれ、どんな目的であれ、フィリピンのことを知ってもらいたいと思っています。
そのためには、こういうネットの情報や文献を読んで見ることももちろん大切だとは思うのですが(だから僕も書いてます)、実際に現地に訪れて直接自分の目で見てみることが一番大切だと感じています。
だから、少しでもフィリピンに関して興味を持っている方がもしいましたら、ぜひ連絡してくださいね!
スラムツアーの予約の仕方であったり、その他諸々のことを含めて、僕にできることはなるべくお手伝いさせて頂きたいなと思っているので。
ということで、今回はこれまでになります。
フィリピンに蔓延る格差が広がっているんだ、と知っていただく一助になれてたら幸いです。
今度は貧困問題に焦点をあてた記事も書いてみようかなと思っていますので、ぜひそちらも見てみてくださいね!